ロボット・セラピーって何?

 皆さんはロボット・セラピーと聞くとどのようなことをイメージしますか?
『ロボットとふれあうとなんだか癒される…』
 このようなイメージをお持ちだと思います。ですが、漠然とした効果を得るために、高いセラピーロボットを購入するというは、気が引けてしまいますよね?

 ロボット・セラピーコラム第1回は、そもそもロボット・セラピーって何?をテーマに、ロボット・セラピーの成り立ちについて解説します。まずは、どうしてロボット・セラピーという考えが生まれたのかを知っていただければと思います。

 ロボット・セラピーを語る上で欠かせないのが、アニマル・セラピーです。
 動物とのふれあいが人間に良い影響を与えることは経験的に知られていましたが、実際の効果を科学的に明らかにしたのは、1960年代頃に欧米諸国で盛んに実施された実証実験でした。具体的には、

  • ユーザへの聞き込みから分かる心理的効果

     1. 元気づけられる、やる気が出る、活動的になる
     2. リラックスする、くつろげる
     3. 自信が持てる、達成感がある、責任感が持てる、自立する
     4. 心を和ませる、遊び心をくすぐる
     5. 人に親密な印象を抱く、人に受け入れられていると感じる
     6. 感情を表現できるようになる、イライラや不安に思うことを話せるようになる
     7. 注意力が上がる、反応速度が上がる
     8. 過去の出来事を思い起こして自分を見つめ直すことができる

  • ユーザの体に着けた計測器の数値変化から分かる生理的効果
     1. 病状が回復する、病気と闘うだけの体ができる
     2. リラックスする、血圧やコレステロール値が低下する
  • ユーザの家族や友人への聞き込みから分かる社会的効果
     1. 人とのふれあいのきっかけとなる、人とのふれあいがスムーズになる
     2. 人との会話が多くなる
     3. 人と協力できるようになる、集団行動がとれるようになる
     4. 自分自身で活動しようと努力できるようになる
     5. 人に協力をお願いできるようになる

が挙げられます。このような動物とのふれあいにより得られる効果を医療に応用したのがアニマル・セラピーです。特に、リハビリテーション科、小児科、精神科、そして老人医療における効果が期待されています。

 アニマル・セラピーを医療現場に導入するためには、①施設側の理解を得る、②患者とその家族側の理解を得る、③動物のしつけや体調、衛生面の管理体制を確立する、④問題(動物由来の感染症の発生、噛みつきや引っ掻きによる怪我等)が起こった場合の責任の所在を明らかにする等といった制度を整備するという難しい課題をクリアする必要があります。欧米諸国は、動物が日常生活に溶け込んでいるということもあり、動物を医療現場に招くことに対する抵抗感が低く、着実に課題をクリアし、アニマル・セラピーは広く普及しました。それに対して日本は、今でこそ○○カフェという形で動物が身近な存在となりましたが、動物=不潔・危険というイメージは根強く、動物を医療現場に招くことに対する抵抗感が高く、アニマル・セラピーはあまり普及していません。

 このような現状に対し、2000年代初頭から、動物の代わりに動物型ロボットを使用できないか実証実験が日本で始まりました。ちなみに、当時は初代AIBOの全盛期で、日本中が動物型ロボットに注目していました。実証実験の詳しい内容は今後解説していきますが、実証実験を通して、アニマル・セラピーと同様の効果が認められるとともに、清潔であること、安全であること、動物にストレスをかけなくてもよいこと、そして何より、プログラム変更によりふれあい方を必要に応じて進化させることができるという利点が明らかになりました。この結果を受けて、横山先生をはじめとした諸先生方がロボット・セラピーを提唱されました
※ 1996年頃に和田先生をはじめとした諸先生方が提唱したとする論文がありました。もう少し調査してみます。

 ところで、アニマル・セラピーという言葉は、日本における造語(悪く言えば誤訳)でして、動物介在療法が正確です。また、皆さんがアニマル・セラピーと聞いてイメージする、動物とのふれあいにより癒しを得ることは、医療ではないため、厳密には、動物介在活動として区別されています。

  • 動物介在療法(Animal Assisted Therapy)
    医療従事者監督の下、治療の一環として動物とのふれあいを処方する療法のこと
  • 動物介在活動(Animal Assisted Activity) 
    レクリエーションの一部として、動物とのふれあい癒しを得る活動のこと

横山先生はこの表現に倣ってロボット・セラピーを提唱されていらっしゃいます。そのため、冒頭で述べた皆さんがロボット・セラピーと聞いてイメージする、ロボットとのふれあいにより癒しを得ることはことは、厳密には、ロボット介在活動と呼びます。

  • ロボット介在療法(Robot Assisted Therapy)
    医療従事者監督の下、治療の一環としてロボットとのふれあいを処方する療法のこと
  • ロボット介在活動(Robot Assisted Activity) 
    レクリエーションの一部として、ロボットとのふれあい癒しを得る活動のこと

 ここからは、私個人の考えになりますが…。

 アニマル・セラピーは、動物とのふれあいにより得られる効果を適切に処方するため、医療従事者が患者の状態を確認する必要があり、医療従事者の存在は必要不可欠です。そのため、医療従事者を伴わない動物介在活動と区別されてしかるべきです。現在、アニマル・セラピーという言葉が広く使われてしまっていますが、動物介在療法と動物介在活動のことが正確に伝わるよう、発信力のあるメディアの方々には是非、動物介在療法のボランティアの方々が運営していらっしゃるホームページに目を通してもらいたいです。
 一方、ロボット・セラピーは、センサ類の進化が目覚ましいことから、ロボットが医療従事者に代わり患者の状態を確認するようになり、いずれ、ロボット介在療法とロボット介在活動の違いはなくなると私は考えています。ロボットが医療従事者も兼ねるようになった時、必要に応じていつでも処方できることがロボット・セラピーの新たな利点となります。深刻なストレス問題に対処するためにも、ロボット・セラピーの在り方を柔軟に変化させていく必要がありそうです。

[参考文献]

  1. 横山章光: アニマル・セラピーとは何か, 日本放送出版協会, 1996.
  2. 横山章光: ロボットを活用した精神医療の可能性ーアニマルセラピーの視点からー, 最新精神医学, Vol.7, No.5, pp.439-447, 2002.

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です