アカデミア研究者に企業研究者。一口に研究者と言っても様々です。副業研究者のすゝめと銘打ってはいますが、副業研究者の良い点・大変な点を解説しつつ、大学や研究機関以外にも研究者になる道はあるということをお伝えできればと思います。

 副業研究者の良い点・大変な点を解説する前に、研究者にはどのような形態があるか、お話しします。

 研究者は、機関に所属している帰属系研究者と、機関に所属していない独立系研究者に大別できます。業界をリードしているのは、大学等の教育機関や国や自治体等の研究機関に所属しているアカデミア研究者です。企業に所属している企業研究者は、機密の観点から、あまり表には出てきません。自身の研究成果に基づき事業を興す起業研究者は、最近の大学発ベンチャーブームも相俟って、急速に数を増やしています。
 機関に所属していない独立系研究者は、自費で研究する在野研究者のみですが、実はアカデミア研究者より数が多いと言われています。また、考古学や民俗学、天文学、社会科学等の分野は、在野研究者とアカデミア研究者の協力によって発展してきたと言って過言ではないほど、重要な存在です。

研究の形態
研究者の形態

 副業研究者は、本業で生計を立て、副業の範囲内で研究する人のことです(事業化しない場合は、趣味の範囲内とも言えますね)。副業で生計を立て、研究を本業とする在野研究者と非常によく似ています。また、本業は帰属系研究者である人が多いことから、帰属系研究者と独立系研究者、双方の形態の良さが活かせるのではと私は考えています。副業研究者を5年続けてみて感じた3つの良い点を以下に記します。

1. 自由に研究ができる

 独立系研究者に共通する良い点です。研究者は自分が研究したいテーマを自由に研究していると思われがちですが、実際は違います。アカデミア研究者であれば所属研究室のリーダが示す指針に沿ったテーマ、企業研究者であれば会社方針に沿ったテーマを研究しなければいけません。研究費獲得のため、敢えて流行のテーマに寄せることもあるかもしれません。独立系研究者は、そういった束縛を受けることはありません。研究者らしく、自分の知的好奇心を満たす研究に注力できます。

2. 心にゆとりを持って研究ができる

 独立系研究者に共通する良い点です。帰属系研究者にはノルマが課されます。アカデミア研究者であれば論文数等、企業研究者であれば特許出願数等が所定の数以上となるよう、努力しなければなりません。ノルマを達成できなければ職を失う可能性もあるため、心にゆとりを持てない研究者は数多くいます。残念ながら、研究の質を犠牲にしてまでノルマを達成しようとする研究者もいます。独立系研究者は、そういったノルマが課されることはありません。自分のペースで、自分が納得できるまで追究することができます。

3. 本業で得た知識・スキル・人脈を活かせる(逆も然り)

 副業研究者独特の良い点です。本業と研究、知識・スキル・人脈を得る機会が一般的な研究者の倍あるということです。さらに、本業が研究分野と異なる分野であれば、どうしても狭くなりがちな視野を広げる機会にも恵まれます。私の場合、本業で生体計測を扱う機会があったからこそ、生理的セラピー効果を検証できますし、本業でエージェントに実体がある必要性を問われる機会があったからこそ、身体性がセラピー効果に与える影響を検討するアイディアが生まれました。
※ 在野研究者は、副業をあくまで生計を立てるためのものとしている方が多いと聞き、副業研究者独特のものとしました。

 副業研究者も良い点ばかりではありません。副業研究者を5年続けてみて、大変な点もたくさんあることがわかりました。以下、3つの大変な点を記します。

1. 研究費は自費である

 独立系研究者に共通する大変な点です。帰属系研究者は、大なり小なり研究費が機関から割り当てられます。それ以外にも、アカデミア研究者であれば研究助成を、企業研究者であれば研究予算を所定の審査を経て獲得することができます。この研究助成というのが難点で、その多くが機関に所属していることを前提としているため、独立系研究者は応募することすら許されません。最近では、クラウドファンディングという手段もありますが、やはり大半を自費で賄わなければならないことには変わりありません。

2. 機関所有の資源を利用できない

 独立系研究者に共通する大変な点です。帰属系研究者であれば、基本的なソフトウェアであれば機関からライセンスが割り当てられますし、附属図書館や機関が契約した文献閲覧サービスも利用できる等、必要最低限の研究環境が機関から与えれます。また、人を対象とする研究倫理審査委員会が設置されている等、論文投稿に必要な審査を受けることができます。これに対し、独立研究者は、研究に必要なもの全てを自分自身で準備しなければなりません。
※ 私の場合、本業の倫理審査委員会に審査をしていただいた範囲内で実験を行い、問題を回避しています。

3. 時間・人員に制約がある

 副業研究者独特の大変な点です。副業研究者は、あくまでも副業の範囲内で研究するため、研究に費やせる時間は本業の業務時間外だけになります。平日に開催される学術講演会に参加することはできませんし、業務がある学会の委員会に所属することも難しいです。また、あくまで副業であるため、一緒に研究する人を募ることもできません。一緒に研究する人が居なければ刺激を受ける機会も少ないですし、一から十まで自分でやらなければならないため、どうしても研究スピードが遅くなってしまいます。

 大変な点もありますが、副業研究者を目指すのもありかな?と思った方は、是非「在野研究ビギナーズ」を読んでみてください。文系在野研究者の方々による実例集になります。先にも記した通り、副業研究者と在野研究者は非常によく似ているので、参考になると思います。また、日本神経回路学会誌の在野研究者特集号もおすすめです。

 副業研究者を目指すことを決めた方は、まずは副業研究に理解がありそうな勤務先を見つけましょう。本業も研究者でありたいという方は、JREC-IN Portalを定期的にチェックするようにすると、株式会社イデアラボのような、副業研究者に理解のある勤務先を見つけやすいと思います。

 前のコラム  目次に戻る 次のコラム 

ご意見・ご感想は、こちらまで。