セラピーロボット「パロ」は、頭を撫でると「きゅー」と鳴きながらすり寄ってきたりと、非常に愛くるしく振舞います。こうした振舞いにより人々を魅了するセラピーロボットですが、セラピー効果同様、その愛くるしさは、開発者の努力によるところが大きいのが現状です。印象とセラピー効果には相関があることから、セラピー効果を高める意味でも、どのような振舞いが人々を癒すのか、明らかにする必要があります。
 こうした現状を踏まえ、ちょぼたん研究所では、セラピー効果を高める振舞いの検討も進めています。
 これまでに明らかになったセラピー効果を高める振舞いは、

 セラピー効果を高める振舞い 

1. 話しかけられた声の基本周波数に同調した基本周波数の音声で返答する ➜検証
2. ユーザの性格に応じて、働きかけに対する反応を変化させる ➜検証

の2つです。

 以下、セラピー効果を高める振舞いに挙げる根拠となった研究をご紹介します。

Importance of Synchrony of Voice Fundamental Frequency

 ものまねぬいぐるみをご存知でしょうか。録音した声を調音・再生してオウム返しする玩具で、会話はできませんが、幅広い世代の方々を癒しています。オウム返しは、相手の声を真似ていると捉えることができますが、相手の振舞いを真似ると好感度が高まる(カメレオン効果)ことから、ものまねぬいぐるみの人気の秘密は、模倣にあると考えられます。そこで、模倣によりセラピー効果(ストレス緩和効果)を高めることができるか、検証しました。模倣する対象は、会話内容に依存しない声の高さ(ピッチ)としました。
 ストレス負荷をかけた後と応答音声のピッチを模倣するロボット、模倣しないロボット、もしくはランダムに調整するロボットと会話した後のストレス状態を、アンケートと脳波により数値化し、その変化量を算出した結果が下グラフです。ピッチを模倣するロボットの方が、疲労の緩和、混乱の緩和、活気の向上、a波(リラックスすると増加する脳波)の増加効果が高いことが確認できます。したがって、ピッチを模倣することによりセラピー効果を高めることができると言えます。今後は、どのようにピッチを模倣するとよりセラピー効果を高めることができるか、ピッチ以外に模倣するとセラピー効果を高めることができる要素はないか、検証する必要があります。

ピッチ模倣の方法
ピッチの模倣方法
ピッチ模倣がセラピー効果に与える影響の検証結果
比較結果
[関連文献]

Influence of Users' Traits on Therapeutic Effects

 ユーザの意見を反映し、進化し続けている「パロ」。例えば、高齢者福祉施設の要望を受け、否定的な反応に対して混乱しがちな認知症者向けに、頭を叩いても嫌がらない寛容なパロが開発されました。このようなユーザの特性を考慮したセラピーロボットの需要は、今後ますます増加すると考えられます。ユーザの特性として、性別・年齢・環境・病状などが挙げられますが、好みと密接な関連がある性格に注目し、ユーザの性格と振る舞いに対する印象の関係を検証しました。性格は、ビッグファイブ理論に基づき、得点化しました。
 寛容的な反応をするロボット、もしくは感情的な反応をするロボットの印象と、実験参加者の性格5因子の共分散構造分析結果に基づき、実験参加者を外向性が低い人と高い人、開放性が低い人と高い人に分け、印象を比較した結果が下グラフです。外向性が低い人の方が寛容的な反応をするロボットに対して外向的で誠実な印象を、開放性が低い人の方が感情的な反応をするロボットに対して寛容な印象を抱くことが確認できます。したがって、外向性の高いユーザの利用を想定する場合は寛容的な反応、開放性が高いユーザの利用を想定する場合は感情的な反応に留意して振る舞いを設計する必要があると言えます。
 現在、ユーザの性格と振る舞いの違いによるセラピー効果への影響に関する論文を執筆中です。

ビッグファイブ性格特性
性格を決定づける5因子(ビッグファイブ)
ビッグファイブ性格特性が印象に与える影響の検証結果
比較結果
[関連文献]

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