セラピーロボット「パロ」を皮切りに、多数のセラピーロボットが販売されました。中には、セラピー効果が実証されたものもあります。しかしながら、セラピー効果を引き出す要素は明らかにされていないため、現在販売されているセラピーロボットの効果は、開発者の努力によるところが大きいのが現状です。
 こうした現状を踏まえ、ちょぼたん研究所では、セラピー効果を引き出す要素の検討を進めています。最終的には、セラピーロボットの設計要件としてとりまとめたいと考えています。
 これまでに明らかになったセラピー効果を引き出す要素は、

 セラピーロボットの設計要件 

[大前提] 物理的なふれあいができること ➜検証
1. ふれると変形し、やがて元の形状に戻る程度の柔らかさがあること ➜検証
2. 外観から期待される重さと大きく差がないこと ➜検証

の2つです。この2つの要件は、既にセラピーロボット「ちょぼたん」シリーズに組み込み、セラピー効果が高まることを確認しました。

 以下、セラピーロボットの設計要件の根拠となった研究をご紹介します。

Importance of Physical Embodiment

 スマホアプリ「ねこあつめ」が爆発的な人気を博したことをご存知でしょうか。画面上に映し出されるCGキャラクタの姿に、多くの利用者の方々が癒しを感じたそうです。そもそもロボット・セラピーは、諸事情で動物とふれあうことができない方に、アニマル・セラピーと同様の効果を与えるために考案された活動です。もし、前述のことが事実であれば、CGキャラクタ・セラピーもあり得ると考えられます。そこで、下図のロボットとキャラクタのセラピー効果(ストレス緩和効果)を比較しました。
 ストレス負荷をかけた後とロボット、もしくはCGキャラクタとふれあった後のストレス状態を、アンケートと脳波により数値化し、その変化量を算出した結果が下グラフです。ロボットの方が、緊張の緩和、活気の向上、a波(リラックスすると増加する脳波)の増加効果が高いことが確認できます。ロボットとCGキャラクタの一番の違いは、物理的なふれあいを可能とする身体性です。したがって、セラピー効果を引き出す上で身体性は重要であると言えます。一方で、CGキャラクタの方が信頼感が高いことも確認できたため、場面に応じて適切な選択をする必要があります。

身体性がセラピー効果に与える影響
比較条件
比較結果

[関連研究]

Importance of Soft Tactility

 セラピーロボットは多数販売されていますが、その触感は様々です。「パロ」のように柔らかいロボットもいれば、「aibo」のように硬いロボットもいます。柔らかいものとのふれあいには高いセラピー効果があると言われていますが、硬いロボットの方が洗浄しやすいと言う利用現場があることもまた事実です。硬いロボットであってもセラピー効果が十分に得られるのか、明らかにする必要があります。そこで、下図の柔らかいロボットと硬いロボットのセラピー効果(ストレス緩和効果)を比較しました。
 ストレス負荷をかけた後と柔らかいロボット、もしくは硬いロボットとふれあった後のストレス状態を、アンケートと脳波により数値化し、その変化量を算出した結果が下グラフです。柔らかいロボットの方が、緊張の緩和、抑鬱の緩和、活気の向上、混乱の緩和、疲労の緩和、a波(リラックスすると増加する脳波)の増加効果が高いことが確認できます。また、検証の中で、柔らかいロボットのモフモフ感が、ふれあう意欲が低下してしまう(飽きてしまう)ことを抑制する可能性も明らかになりました。したがって、セラピー効果を引き出す上でモフモフした柔らかい触感は重要であると言えます。今後は、柔らかいロボットを清潔に保つ方法を検討する必要があります。

柔らかさがセラピー効果に与える影響
比較条件
比較結果

[関連文献]

Importance of Subjective Sensory Weight

 セラピーロボットの利用者の方々から、ロボットの軽量化を期待する声を耳にします。しかしながら、敢えて赤ちゃんを連想させる重さにした「パロ」のセラピー効果の高さを無視することはできません。重さに限らず人は、期待から一定の範囲を超えると、必要以上に評価を誇張する傾向にあります(同化ー対比理論)。ということは、セラピーロボットの重さが期待通りと感じた人と期待外れと感じた人とでは、セラピー効果にも差が生じるのではないでしょうか。そこで、期待通りの重さと感じた人と期待外れの重さと感じた人のセラピー効果(ストレス緩和効果)を比較しました。
 ストレス負荷をかけた後とセラピーロボットとふれあった後のストレス状態を、アンケートと脳波により数値化し、その変化量を算出した結果が下グラフです。期待通りの重さと感じた人の方が、抑鬱の緩和、怒りの緩和、混乱の緩和効果が高いことが確認できます。したがって、セラピー効果を引き出す上で期待通りの重さと感じさせることは重要であると言えます。今後は、セラピーロボットのデザインに基づき、利用者が期待するであろう重さを導き出す方法を検討する必要があります。

同化-対比理論
比較結果

[関連文献]

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